ESG投資は今どうなっていて、どこに向かっている?不要論に飛びつく前に要因分解をして考えよう

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以前私のブログで「ESGは死んだ」という英国FTの記事を紹介しました。日本のメディアでも同様の報道がありました。「ESGが消えるべき3つの理由 米で政治化、欧州は常識」(出所:2023年7月8日、日経新聞)
10月23日のFTで、改めて「ESGは死んだ」系の記事が紹介されています。タイトルを訳すると「ESGは救いようがない。早く消えて」といった感じでバッサリと切り捨てています。
ESG is beyond redemption: may it RIP by Aswath Damodaran (Source:October 23 2023 edition of FT Online.)

欧州、米国では2019年8月にDWS(ドイツ銀行の資産運用部門)、続いてブラックロックのサステナビリティ投資責任者による相次ぐ内部告発を皮切りに、欧米においては金融機関による相次ぐグリーンウオッシュ、企業によるバリューウオッシュがメディアに取り上げられています。ESGへの逆風が吹きまくっています。また不正をせず、ルールを守って真面目にコツコツやってきた投資家や企業の間にも「ESG疲れ」が見られます。

でも、ESGは不要だ、と切り捨ててしまって良いのでしょうか。ESGは今どうなっていて、どこに向かっているのでしょう。

IR担当者としては、グローバルにおけるESG投資の大まかな流れは常にアップデートしておくことをお勧めします。投資家との温度感がずれてしまうからです。インパクト投資家からのヒアリングを行い私の見解をまとめてみました。

まず、ESG不要論に飛びつく前に、なぜこのようなESG不信が起きたのか、要因を分解して考える必要があると思っています。
①ESG投資は「死なない」:過去25年以上にわたって概念として進化を続けてきたESG。概念そのものが急に「死ぬ」、「消える」とは考えにくい。ESG投資は進化の途中にある。
②ESGデータの疑義性:要因分解をすると、問題は格付機関が投資家に提供する「ESGデータ」の疑義性にあるのであって、ESGのコンセプトそのものが問題なのではない、ということです。問題は、大手格付会社のESGレーティングの計測方法は明らかにされていないことから、透明性・公平性の担保が相当難しい点にあります。ESGデータの疑義性と、ESG投資の原則を混合して議論するのはちょっと違うと思っています。
③ESGデータの透明性を担保し、投資家が安心して投資判断に使えるようにする必要があり、misrepresentation (あたかもそこにあるかのごとく装うこと)が出来ないルール作りが急務であるということです。欧米では早くも業界ごとのESG開示に係るルールづくりなが進められています。
④ESGファンドの選別が起こる
過去10年でグローバルの巨大投資家などが「環境や社会に良いことをしている」と旗を振って資金を集めた結果、世界の総資産の3分の1をサステナビリティ関連のマネーが占めています。短期的な利益獲得をねらうようなファンドが規制強化を嫌気し次々撤退していくのも、ある意味予想が出来たことかもしれません。
⑤結論:淘汰を生き抜くのは「本物」だけ
上記のような流れから、私は現在ESG投資は、今曲がり角にあると考えます。淘汰のさなかにある、ということです。約半数のESGファンドが2年未満の設定をされており、順次繰り上げ償還されているとブルームバーグは伝えています。利益を確定したら早々に退散する(「なんちゃってESGファンド」とでも呼んでおきましょう)の数が新たに設定されるESGファンドを上回るとのこと。
今後、ESGを謳うファンドに課されるルールはさらに多くなることから(下記参照)それでもESGファンドとして残存する選択をしたサスティナブル投資家には志があるという証左になるのではないでしょうか。
志を持つ「本物」だけが淘汰を生き抜いていくと、私は考えます。

ブーム去り繰り上げ償還相次ぐ、ESG投信に「異変」-設定2年未満も
(出所:ブルームバーグ)
[世界のESG規制]気候変動や人権など新ルールが2倍超に
(出所:日経ビジネス)